第7章 傷
【鈴side】
放課後。私はいつものように校門で待ち合わせをしていたおそ松くんと一緒に、ファミレスに入って談笑していた。
注文した苺パフェを頬張る。甘くてとてもおいしいのに、心から喜ぶことができない。
おそ松くんと話していてもそう。彼の話は面白くて、聞いているだけでも楽しいけれど、何かもやもやとした感情が胸の奥に突っかかってるような気がして落ち着かないのだ。
せめて彼の前では…ううん、彼の前でこそ笑顔でいなきゃと思うのに、うまく笑えてる自信がない。
「……なぁ、鈴」
「う、うん?」
「間違ってたら悪いんだけどー…最近、なんかあった?」
思わず、持っていたスプーンを落としそうになる。それくらい、彼の言葉に衝撃を受けた。
おそ松くんは意外と…というと失礼だけど、勘がいい。観察眼に長けているというか。だから私自身、どれだけポーカーフェイスを貫けたとしても、いつかは必ずバレるだろうなとは思っていた。
…そう、イッチー…一松くんのこと。
あれから2週間近く経った。でも私はあの日以来、一松くんと喋っていない。
保健室に寄ったりもしたんだけど、私が訪ねた時は必ず不在だった。かといって教室にも姿は見えない。
一回だけ廊下でたまたますれ違ったことがあったんだけど、私が何か言う前に走って逃げられてしまった。
明らかに避けられてる…それはこの2週間の彼の行動で十分分かった。
私は、彼を問い詰めたいわけじゃない。ただ、彼の機嫌を損ねたのはきっと私だろうから、せめて一言、謝りたいだけなのに…
「鈴?おーい」
思案に耽っていた私の顔の前で、おそ松くんが手を上下に動かす。そ、そうだ、質問に答えないと!
真実は伝えたくない…でもここで¨なんでもない¨なんて言っても、余計に怪しまれるだけだろう。何かうまく誤魔化す方法は…うーん。
すると、困り果てている私を見かねて、おそ松くんはため息をついた。
「いや俺もさ、聞いていいものか迷ったんだよ?ここんところお前、放課後に会ってもいつも浮かない顔してるし、笑顔も無理やり作ってるって感じで見てて痛々しかったし」
あ…やっぱり、見抜かれてたんだ…。