第7章 傷
午前中の授業を全て受け終え、昼休憩に入ったところで、僕は保健室に足を運ぶ。
5限目は体育。シャトルランだったか持久走だったか、どっちかだったはず。運動嫌いな僕には不向きだしテストに関係ないからサボることに決めた。6限目は選択授業の書道だったはずだけど、消去法で選んだだけだからどうでもいい。
僕が高成績にこだわるのは、あくまで毎日を楽にするため。このクソつまらない高校生活を無難に終わらせるためだ。所詮教師どもは生徒を上っ面でしか評価しない奴らだから、頭がよけりゃなんでも大目に見てくれる。
…そう、頭がよければなんだって。中学の時もそうだった。
「…失礼します」
保健室の戸を開けて、中に入る。榎田先生はもう慣れたもので、こちらを見向きもせず、机に向かって何か書き物をしていた。
もはやすっかり僕専用の寝床と化してしまった真っ白なベッドにダイブする。家では布団だから、ベッドで寝られるのはここだけ。落ち着く…
そういえば一応昼だし、なんか食べたほうがいいのか?…あー、でも金ないや。諦めよ。
目を閉じる。今から寝て爆睡すれば、ちょうど帰宅時間くらいには起きられるだろ。
***
『1人だけずば抜けて優秀なんですって』
『他の子はそうでもないんでしょう?6つ子なのに変わってるわよねぇ』
『一松ってさぁ、兄弟のこと見下してるよな』
***
ガバッ!
「…っ…!」
…また、だ。
高校生になった今でも、たまに見る悪夢。…いや、過去夢か。
「…くそ…」
おかげで気分が優れない。時間は…5時半。これでもだいぶ眠っていたのか…。
起きるか起きないか一瞬考えて、僕はまたベッドに潜り込む。頭が痛い。治るまで横になっていよう。
ガラッ
「失礼します」
……この声。
「あれ、榎田先生またいないや。イッチー、いるー?」
なんだ、いつの間にか僕1人になってたのか。それにしてもタイミング悪…
シャッ
「あ、いた!イッチーっ」
躊躇いもなくベッドを覆うカーテンが開かれ、笑顔のあいつが姿を見せる。プライバシーの侵害という言葉をこいつは知らないのだろうか。