第7章 傷
【一松side】
「………」
1年5組。僕のクラス。
中間テストも間近に迫っているため、さすがの僕も試験範囲確認のために、ここ数日は真面目に教室で授業を受けているのだが、かったるいことこの上ない。
一番前の窓際にある自分の席は、ぼけーっと外の景色を眺められるから気に入ってはいる。僕に注意する教師は誰もいないから眠り放題でもある。
ただ、やっぱり人口密度の高い教室は落ち着かない。まぁ、僕に話しかける物好きなんていないに等しいけどね。
教壇に立って熱弁を振るう英語教師。黒板にいくつも書かれた英文。正直英語は昔から好きではない。苦手というわけではなく、単純に好みの問題だ。だから基本的にいつもやる気はない。
…ここはわりと静かだ。生徒の話し声がまるで聞こえてこない。あまり来ないし興味もないから知らなかったけど、このクラスは大人しい奴ばかりなんだな。
適当に教科書を先までパラパラとめくる。ああ、そういえば中学の時、ページの隅にパラパラ漫画とか書いてたな、なんてどうでもいいことを思い出す。
中学までは当然、僕たち兄弟はみんな一緒の学校だった。朝は全員同じ時間に登校して、クラスが違っても集まっては、休み時間によくやんちゃして先生に怒られてたっけ。
そんなに昔のことでもないはずなのに、1人になってみるとやたら懐かしく感じる。
自分で選んだんだ。後悔はしていない。
でも家に帰って、みんなが僕にその日学校であったことを嬉しそうに報告してくるのが、実は少し辛かったりする。
教えてくれるのが迷惑なわけじゃない。ただより一層、僕が別世界の人間のように思えて、心が痛むんだ。
…他人だらけのこの空間にいると、感傷的になっていけないな。早くテスト期間、終わればいいのに…。