第5章 交錯
「…食べるよ。ちょっと観察してただけ」
「あ…」
短いため息をついた後、一松くんは箸で玉子焼きを掴み、口に運んだ。
ど、ドキドキする。おそ松くんに渡す時もドキドキしたけど、実際に食べてる姿は見なかったから、緊張がダイレクトに伝わってくるなぁ…。
もぐもぐ…と何度か咀嚼して、飲み込む。ここまで相変わらずの無表情。な、何かリアクション…リアクションプリーズ…!
「………甘い」
「へ?」
「甘すぎ。砂糖の塊。ところどころ生、焼けてない。…感想以上」
ガーーーンッ!!
「て、手厳しいです、一松様…」
「だからなんで様づけ?…あと、別にまずいとは言ってないだろ」
「え…でも言い方に悪意を感じました…」
「っ…た、玉子焼きは甘い派だから嫌いじゃない…ただ、もう少ししっかり焼いて欲しかっただけ…分かった?」
「!うん!よかった、おいしかったんだね!」
「そこまでは……ああもう、他のも食べる」
「どうぞどうぞっ」