第5章 交錯
私は図鑑をカバンにしまい、代わりに中から2つの弁当包みを取り出して、1つを一松くんに差し出した。
「…は?何これ」
「見た目通り、お弁当です!一松くん、いつもお昼まともに食べてないんでしょ?おそ松くん心配してたよ」
「…あのクソ兄貴…なんでもぺらぺらと…」
一松くんは躊躇っていたけれど、恐る恐る包みをほどき、弁当箱の蓋を開けようとして…止まる。
「どうしたの?あ、先生にはここで食べていいって許可もらったから、気にしなくていいよ」
「いや、そうじゃなくて…なんで弁当?僕頼んでないんだけど」
「昨日のお礼!私にできることで何かないかなーって思って、朝早起きして頑張って作ったの!」
そう、お弁当作りのきっかけは、昨日膝に負った怪我を一松くんに手当てしてもらったこと。
本当は治ってからにしようと思ったんだけど、この感謝の気持ちをどうしても早く伝えたくて、腕によりをかけちゃったんだよね。
数日前に、おそ松くんからのお願いでお弁当を作った時、帰りにおいしかったって言ってくれたし、自信はある!うん!
「だから一松くん、遠慮せず食べて!足りなくなったら私の分も食べていいよ!」
「…はぁ。あんた料理得意なの?」
「普通!」
「なにその回答。そこは嘘でも得意って言ってよ…」
「だ、大丈夫だよ!おそ松くんのお墨付きももらったし!はい、一緒に食べよう!いただきまーすっ」
「ちょ、強引……はぁ。いただきます…」
パカッ
「……」
い、一松くん、すごく弁当の中身を凝視している……は!ま、まさか、こう見えてかなりの美食家!?お、お気に召さない食材でも入っているのかしら…!?
「あ、あのー、一松様…」
「…なんで様つけるの?」
「う、ううん、なんていうか…食されないのかな、と思いまして…」
どうしよう、変な汗が…!だって一松くん、いつも同じ無表情で、何考えてるか分からないんだもん…!
見た目は問題ないと思うんだけどな…いきなりお弁当はさすがにハードルが高かった?お菓子系の方がよかったかも。