第5章 交錯
【鈴side】
キーンコーンカーンコーン…
4限目の終了を知らせるチャイムが鳴り響く。ああ、やっとお昼だ…!
挨拶をして先生が教室を出ていったあと、私はぐーっと伸びをする。数学ってほんと苦手だぁ…。
教科書を仕舞っていると、怜衣と遥香が私のところにやってきた。
「鈴ー、ご飯食べよー」
「今日も食堂だよね?」
「ごめん、2人とも!私先生に呼ばれてるんだ。だから先に行っててくれない?」
「え…それはいいけど、なんかやらかしたわけ?」
怜衣が訝しげに私を見てくるけど、ここはなんとか誤魔化さないと…!
「何もやってないよ!ただその、ちょっとしたお手伝いがあってね!そういうわけだから、また後で!」
カバンを抱えて、逃げるように教室を出る。よし、なんとか脱出成功!
「…何あれ、怪しすぎ。てかなんでカバン持ってくのさ」
「まぁいいじゃんー、うちらも食堂行こー」
ガラッ
「失礼しますっ」
辿り着いたのは保健室。ここに来れば、確実に彼に会えるはず!
「あれ、天川さん。どうしたの、怪我でもした?」
榎田先生は、保健担当の女教師。って言うとマンガみたいな美人女医を想像しちゃうけど、母性溢れる優しいおばさ…じゃなくて、ぎ、ギリギリお姉さん…なんだよね。…年齢非公開だけど、た、多分。
「いえ、怪我もしてないし、具合も悪くはないんですけど…松野くん、いますか?」
「松野くんに会いに来たの?いるけど、今の時間は熟睡してるから…叩き起こす?」
…この先生、いい人ではあるんだけど、たまに口が悪いよなぁ…。
「だ、大丈夫です。起きるまで待ってます。それと、あの」
「うん?」
「絶対に汚さないので…ここで飲食してもいいですか?」