第5章 交錯
「さっきは本当にありがとう!また明日ね!」
…¨また明日¨。
「……じゃあね」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で返事をし、僕は振り返ることなく自転車でその場から走り去った。
……素直に、なれなかった。
「また明日」「またね」と返すことができない。
同じ学校とはいえ、クラスは違うし、僕はほとんど保健室に入り浸っているしで、なかなか顔を会わせないからかもしれないけど。
何より、¨また明日¨なんて言われ慣れてなくて…反応に困った。
天川…鈴、か。
きっともう、今日ほど関わることはないだろう。彼女がまた怪我でもして保健室に来ない限りは。
それでいい。僕は一線を引くべきなんだ。仲良くする必要なんてない。
だってあいつは、おそ松兄さんの彼女なんだから。
…そう、思っていたのだけど。
どうやら彼女の考えは僕とは真逆で、次の日から苦労する羽目になることを、この時の僕はまだ知る由もなかった。