第5章 交錯
外に出て、自転車小屋から自転車を引いて持ってくる。
「一松くん、自転車通学なんだ」
「この高校からうちまでは遠いから。あんたは?」
「電車通学だよ。駅からここまでもわりと距離あるから大変なんだー」
「ふぅん」
そういえば、駅まで送ったとかなんとかおそ松兄さんが言ってたっけ。多分今日も…
「…あ!おそ松くん!」
校門の前に立っている人影を見つけ、彼女は嬉しそうに声を弾ませ駆け出す。ほんとゾッコン…
「お、鈴!久しぶりだなー!」
「えへへ、そんなことないよ。昨日も送ってくれたでしょ?」
「俺にとっては久しぶりなんだよー。あー、今すぐ転校したい。鈴と同じクラスになりたいーっ」
「もう、駄々っ子なんだからー」
…うわ…何あのバカップル。
周りに人がいないからって、校門の前で堂々といちゃつきすぎだろ。
「あれ?一松?」
2人の横を通りすぎようとした時、ようやくおそ松兄さんが僕の姿を捉える。
相手するの面倒だけど…まぁいいや。
「…やっぱり迎えに来てたんだね。彼女足怪我してるから、いつも以上に気遣ってあげなよ」
「えっ!?ちょ、包帯巻いてあんじゃん!どうしたんだよこれ!」
おいおい、今気付いたのかよ…彼氏で大丈夫か、こいつ。
「あはは、不注意で転んじゃったの。それで保健室に行ったら一松くんがいて、手当てしてくれたんだ!」
「え、一松が?」
…わ、なんか気まずいな…。僕に他意はないけど、よく考えたら彼女の足に少なからず触れたりもしたわけだし。
おそ松兄さんが僕に歩み寄る。そして満面の笑みで僕の背中をバシッと叩いた。
「って…!ちょ、いきなりなんだよ…!」
「や〜さすがお兄ちゃん自慢の弟!俺の頼み聞いてくれたんだろ?ありがとな!」
「!」
…杞憂だったな。兄さんはこういう奴だ。
「…別に、放っておいたらこいつが保健室荒らしそうだったからお節介焼いてやっただけ。じゃ、僕先帰るから」
図々しく肩を抱いてくる兄さんの手を払いのけ、僕は自転車に跨がる。
「あ、一松くん!」
ペダルを漕ぎ出そうとすると、彼女が僕を呼び止めた。