第5章 交錯
「失礼しました」
鍵を返して職員室から出ると、僕たちは2人並んで歩き出した。
…やはり覚束ない足取りだ。包帯のせいというよりは、痛みのせいで足を引きずっている。
「…さっきは聞かなかったけど、その怪我、どうしたの」
「え、えっと…グラウンドの脇を歩いてたら、サッカーボールが飛んできてね。拾って持っていこうかと思ったんだけど、かっこつけてみたくてボールを蹴ろうとしたら、助走の段階で石に躓いて盛大に転んじゃったの。あはは、バカだよね」
…バカだ。確かに。
「つまり、自業自得か。甲斐甲斐しく手当てしてやる必要なかったな」
「う…次からは気を付けます…」
「…冗談だよ。まぁ気を付けるべきではあるけど。むやみに傷なんて作ったら、彼氏が悲しむだろ」
「!」
¨彼氏¨というワードを聞いただけで、まるで熟れたリンゴのように顔を火照らす彼女。…どれだけおそ松兄さんにゾッコンなんだか。