第5章 交錯
ガターンッ!
「きゃあっ!ど、どうしよう、落っことしちゃった…!」
集、中……
ああもう、集中できるか!
シャッ
「……何やってるの、さっきから」
「ぴぇっ!?」
体を起こし、ベッドに座った状態でカーテンを開けると、なぜか頭から首にかけて包帯がからまっている状態の女子が、僕を見て変な声を出した。
いや、こっちの方が驚きなんですけど。何がどうなってそうなったの?床にもいろいろ散らばってるし
……片膝から、けっこうな血が出てるし。
はぁ…仕方ないな。
立ち上がり、近付く。パイプ椅子を引っ付かんで彼女と向かい合うように置き、そこにどかっと腰を下ろした。
彼女は半分怯えたような目で、僕を見る。
「あ、あの、起こしちゃってすみません!す、すぐに片付けて手当てして出ていきますんで…!」
「…それより、足」
「へ?」
「手当てするから、じっとしててくれる?片付けはそれから」
彼女が何か言いたそうにしているけど、僕は無視。側に置いてあったティッシュで軽く血を拭き取り、消毒液をガーゼに染み込ませて手早く患部を消毒していく。
「っいた…」
染みるのか、時折彼女が小さく顔を歪ませる。…まぁこれは痛いだろうな、だいぶ深い傷だし。転んだのだろうか。
その後も、僕は持っている応急処置の知識をフル稼働して、テキパキと手当てを進めていく。
…なんか、見られている気がする。めちゃくちゃ視線を感じるんだけど。
歩く時の邪魔にならないように包帯を巻き付け、なんとか完了。ん、やればできるもんだな。
「これでいいと思うけど…気に食わなかったら病院にでも行けば。その方が確実だから」
「う、ううん!ありがとう、一松くん!!」
「…は?」
なんでこいつ、僕の名前…名札の色で同学年なのは分かるけど、少なくともクラスメイトじゃ…
僕が不審そうな顔をしていたからか、彼女は慌て出す。
「あ!ご、ごめんね、いきなり。松野…一松くん、だよね?」
「そうだけど…誰?」
「私、3組の天川鈴っていうの。その…おそ松くんから、何か聞いてたり…」