第16章 追想の愛
彼の頬がじわじわと熱を帯び始め、信じられないとでも言うような驚愕の表情を浮かべる。
「…え、お前、聞こえてたの?ってか覚えてんの?」
「うん、うっすらとだけど…」
「…うわー、マジかよ…うーわー…」
口元を片手で押さえ、照れている顔を見せないようになのか彼はそっぽを向く。その様子がなんだか可愛くて、思わず笑みが溢れた。
「ふふ…私ね、その時に思ったの。まだ死にたくないって。あなたにきちんと再会して、想いを伝えるまでは死ねないって」
「!鈴…」
彼宛ての手紙にも書いた、私の唯一の願い。
…まだ、有効かな。伝えても、いいよね?
「おそ松くん…私、
私は、あなたが好きです」
「…!」
「大好きです…!」
まるでこれが、人生初の告白みたい。
緊張で全身が小刻みに震える。…まだだ。まだ、これが全部じゃない。
あの時伝えきれなかった想いを…今を逃したらきっともう、一生伝えられない気がするから。
「大好き、で…で、でも、だからこそ、関係を一からやり直したいの。わ、別れるんじゃなくて、なんていうか…と、友達から
「却下」
「……へ?」
さっきまでの照れ隠しはどこへやら、一転して不機嫌そうに唇を尖らせている彼。
「却下、って…」
どういう意味か分からず混乱していると、彼の腕が伸びてきて私の体を引き寄せた。
「…だからさ、こういうこと」
―触れ合う、唇。
「…っ!?」
不意打ちのキス。すぐに唇は離れ、代わりにニヤリといたずらっぽく笑う彼の顔が視界に広がった。
「…意味、分かった?」
「…わ、分からない…」
「友達から、なんて認めない。…また俺の彼女になってくれよ、鈴」
「…え、えぇぇ!?」