第16章 追想の愛
いや、それよりも、意図せずして会ってしまった。
どうすれば…
「えーっと…ごめんね!紹介してなかったけど、彼も僕の兄さんなんだ!」
「!ちょ、トド松!」
「えぇっ、そうなんだ!確かにそっくりだもんね」
…まずいことになった。これじゃ逃げるに逃げられない。
しかも調子に乗ったトド松が、俺を彼女のほうへ押しやってくる。
「おい…!」
「ってわけだから、鈴ちゃん。いい機会だし、兄さんとも仲良くしてあげてよ。あ、僕はこのあと用事があるから、もう行くね。それじゃ!」
「う、うん、またね」「こら、トド松てめぇ!……チッ」
小走りで去っていくトド松の背中を睨み付ける。あいつ、帰ったらただじゃおかねぇぞ…!
「あの、トッティのお兄さん」
「……は」
「よかったら、中に入りませんか?お話、しましょう!」
「………」
っなんだよ…嬉しそうに笑いやがって。
ほんと変わらないな、こいつ。能天気っていうか、天然っていうか…
はぁ…調子狂うだろ。
「…分かった」