第4章 募る想い
彼女からの思わぬ誘いに、俺は間抜けな声を出してしまった。
寄り道…?いやそれまさに今俺が提案しようとしてたとこだったんだけど、先手を打たれるとはな。
「…は!で、でも、ご両親の方が心配されるよね!よりによって入学式の日にだなんて非常識にも程があるというか!ごめん、今の忘れて!」
「…いや、俺はいいよ?」
「え!」
父さんも母さんも放任主義だから、息子が帰ってくるのが遅かろうが何も言わないだろうし。他の兄弟も心配とかぜっってぇしないからな、そこは断言できる。
…まぁ、夕飯までに間に合えばいいだろ。確か母さんが入学祝いでごちそう作ってくれるっつってたしな。
「俺はともかく、鈴はいいの?早く帰らなくて」
「うん。私、今家で一人暮らししてるの。両親は海外に出張中なんだ」
「マジか」
高1で一人暮らしとか、レベルたけぇなぁ…事情が事情だからにしても、俺だったら絶対できねぇわ。
見た目は普通の女子高生なんだけどな…ふぅん。
「おそ松くん?」
「!ああいや、わりぃ。じゃあ近くにファミレスあるから、そこでも行く?俺奢るよ」
「いいの?わーいっ、ありがとう!」
よく笑うなぁ、こいつ。感情豊かっていうか。
ころころ変わる彼女の表情は、見ていて飽きない。女の子ってみんなこんなもんなのか?全然分かんねぇ。
…気が付いた時にはもう、俺は鈴のことが好きになってた。
軒下で雨宿りしてる彼女を見つけた時から、運命みたいなものは感じてたのかもしれない。
最初は思いっきり怪しまれたけど、なんていうか…少しずつ会話するうちに、彼女の醸し出す柔らかい雰囲気とか仕草、声に惹かれていって…
俺を問い詰める彼女の、今にも泣き出しそうな顔を見て、
すごく…愛しいって思ったんだ。
恋は落ちるものだって、昔どこかで聞いたことがあったけど、やっと意味が分かった気がする。
…鈴は、俺のどこが好きで告白したんだろう。
知りたいな。もっと、彼女のことを…―