第4章 募る想い
可愛らしい声で名前を呼ばれる。…彼女が、そこにいた。
「鈴っ!」
俺は喜びのあまり、両腕を広げて彼女に抱きつく。
「きゃあっ!ちょ、おそ松くん!?は、恥ずかしいから…っ」
周囲の目を気にしながら必死に俺を引き剥がそうとする鈴。…あー、そんな慌てちまって可愛いなぁ。
つかこいつちっちゃいから、俺の腕ん中にすっぽり納まっちまう。どうしよ、マジ可愛い。
「…離してほしい?」
「えっ」
「嬉しくねぇの?彼氏が迎えに来たんだよ?」
「う…」
わざと耳元で囁いてやれば、鈴はその耳まで真っ赤に染めて、抵抗をやめてしまい大人しくなる。…からかいがいがあるな、そういうトコも俺好みかも。
ま、十分堪能したし、そろそろ離してやるか。
「…ってわけで、一緒に帰ろうぜ!ほら、手繋いでさ!」
体を離すと、鈴は「あ…」と小さく声を漏らし、名残惜しそうな表情を浮かべる。でもそれは一瞬で、頭をぶんぶんと横に振った後、差し伸べていた俺の手を取った。
そして、まるで花が咲いたかのように、ふわりと笑う。
「ありがとう、おそ松くん!一緒に帰ろう!」
「!」
その笑顔を見て、身体中に電気が走ったような衝撃を受ける。か、可愛すぎて死にそう…。
ぎゅっと握られた、小さな彼女の、小さな手。
女の子と付き合ったことがない俺は、いくら余裕ぶっても、彼女の一挙一動にすぐ動揺しちまう。
自分からはガツガツいけるけど、カウンターには弱い。そんな感じ。
2人並んで歩き出す。…はー、マジこの後どうしよ。いやどうもしねぇけど、彼女のこともいろいろ知りたいし、ただ帰るだけってのもなぁ…
と思い悩んでいると、鈴が俺の顔を覗き込んできた。
「おそ松くん、家って近いの?」
「え?ああ、うちの高校からは近いよ。通学も徒歩だし。鈴はどの辺?送ってくよ」
「私は電車通学で…ちょっと遠いの。だから駅まででいいよ」
ありゃ、これは思った以上に一緒にはいられなさそうだな。どうしたもんか…
「そ、それでね、おそ松くん!よ、よかったら、どこかで寄り道していかないっ?」
「……へ?」