第16章 追想の愛
…そして、鈴。
今までに一度だけ、俺たち兄弟宛てに手紙が届いたことがある。確か高校を卒業してすぐだった。
内容は、自分の近況と海外での暮らしについてと、俺たちの身を案ずる、当たり障りのないもの。
文面から、向こうでは楽しくやってるんだろうな、というのは伝わってきた。同時に、日本に戻ってくる予定はまだないことに少なからずショックを受けた。
それからは、全くと言っていいほど音沙汰なし。海外だから手紙一つ出すのも国内ほど簡単じゃないとはいえ、スマホにメッセージすらこないのだ。
かといってこっちから連絡を取るわけでもない。他のみんなは知らないけど、俺はできない。何を話せばいいか分からないから。
時間が経てば経つほど、気持ちに変化が表れると思っていた。けど実際、6年経った今でも、あの時の後悔や苦しみがずっと胸の奥に燻り続けている。
そしてそれはきっと、おそ松兄さんも。
せめて、彼女に会うことができれば…
そう願っていた矢先、
運命の時は訪れた。
…それも、
最悪の形で。