第4章 募る想い
はぁ…あまりにもムカついたから先に学校飛び出してきちまった。あいつらってなんで長男である俺にあんなにドライなんだ…もっと敬えっての。
道端にあった石を蹴り飛ばす。気分がもやもやして落ち着かない。
…そういや彼女、もう帰ったかな。ちょいと校門まで行ってみるか。
***
来てみたはいいけど…人多すぎ。そりゃそうか、入学式だったんだもんな。
…お、ありゃひょっとして。
「一松!」
「…え…おそ松兄さん?」
ちょうど校門から自転車を引いて出てきた一松を発見し、ちょいちょいと手招きをする。一松は俺を見て驚いた様子だったけど、素直にこっちにやってきた。
「よう、入学式お疲れさん!にしても見事に制服似合ってねぇなぁお前」
俺たちの高校は学ランに対して、こっちはブレザー。試着の時も思ったけど、こいつが着ると服に着せられてる感半端ねぇんだよなぁ。
「余計なお世話。っていうか何、こんなとこまで来て。まさか僕を迎えに来たわけじゃないよね」
「まぁな!お前はたまたま見かけただけ。本命は別にあってさ」
「本命?」
「そう!聞いて驚け……なんとこの俺、松野おそ松!入学早々彼女ができてしまいました!!」
「な…っ!う、嘘でしょ?」
「嘘じゃねぇよ、本当だって!」
一松はしばらく疑いの目を向けてきたけど、やがてため息をついた。
「…まぁ、いくら兄さんがバカでもそんな嘘わざわざつかないか。一応おめでとうって言っておく」
「おう!なんか聞き捨てならない台詞があったけど気にしない!ありがとな!」
俺は鼻の下を擦りながら笑う。
「で…もしかしてその彼女、うちの生徒なわけ?」
校門から出てくる生徒を眺めながら、一松が聞いてくる。
「そうそう。馴れ初めは家に帰ってから話すな。ってわけで一松」
「…はいはい、邪魔者は先に帰りますよ。ごゆっくり」
俺の言いたいことを察したのか、一松はやれやれと肩を竦めて自転車に跨がり、制服を靡かせながら走り去っていった。
校門の塀に寄りかかる。鈴、まだかな。もう帰っちまったかなぁ…。
ぶっちゃけ他校の生徒がこんなとこに突っ立ってると、すげぇ目立つ。あまり長居はしたくない。
「…おそ松くん?」