第15章 涙
【一松side】
「…っはぁ…はぁ…っ!」
がむしゃらに走り続け、息が切れてきたところでバランスを崩す。
前のめりに地面に倒れ込むと、膝に激痛が走った。
「ぐ…ッぅ!」
もはや起き上がる気力すらない。ここがどこだかも分からない。
…ああ、何やってんだろうな俺。全身痛くてたまらないのに、転んでまた傷作って。
心も体も血だらけだ。
けど…これでいい。
俺に誰かの助けなんていらない。今も昔も、人を傷付けるしか能のない最低なクズは、ボロボロになって地面を這いつくばってる姿がお似合いだ。
そう、俺は燃えないゴミ。圧倒的社会不適合者。いっそここで死ねたらどれだけ楽か。
…いや、
俺は苦しみ続けなきゃならない。楽な思いをしちゃいけない。
このクソみたいな世界で、ゴミみたいな存在でも生きてかなきゃならない。
ほら…死ぬよりも、生きることのほうが辛いからさ。
俺は地獄を選ぶよ。
なぁ、
だから、これでいい。
「…はは、ははは…」
自分を嘲笑う。滑稽だ。まだ笑えるだけマシか。
「ははは、は……」
……くだらない。
何もかもがくだらなくて、どうでもいい。
ごめんな、鈴。やっぱ、だめだったよ。
話し合いで解決するどころか、一方的に殴られてこのザマだ。
俺が望んだんだけどね。
…合わせる顔がない。せめて友達のままでいられれば、なんて思ってたけど。
そんな資格、端からなかった。どうかしてたんだ。
兄さんが身を引いて、俺だけ彼女の側にいるわけにはいかない。
…とことん苦しめばいいんだよ。俺なんてゴミはさぁ。
「……鈴……」
最後に彼女の名を小さく呟き、俺はあまりの痛みに意識を手放した。
***