第15章 涙
【カラ松side】
学校から帰ってくると、ちょうど二階から下りてきた一松と玄関でばったり出くわした。
「!?い、一松、どうしたんだそのアザ!血も出てるじゃないか!」
今朝ぶりに見た弟の顔は、無惨にも変わり果てていた。
頬は大きく腫れ上がり、目の上が切れていて血が流れている。唇からも血が滲んでおり、体の至るところがアザだらけで青く染まっていた。
着ている制服もところどころ乱れていて、誰がどう見ても喧嘩をした後としか思えない。
心配して駆け寄るも、一松はうざったそうに目を逸らすだけ。流れてくる血をYシャツの袖で拭いながら、時折痛みに顔を歪めている。
「何があったんだ!一体誰と…もしかしておそ松兄さんか?」
「……カラ松兄さんには関係ないだろ」
不機嫌そうに吐き捨て、俺の横を通り過ぎようとする。しかしまだ納得ができていない俺は、咄嗟に一松の腕を掴んで引き止めた。
「ってぇな…離せよ」
「あ…す、すまない」
傷に触ったのか、一松の表情がより険しくなる。喧嘩をしたのは事実なのだろうが、それにしても今の一松は随分と雰囲気が違うような…
「一松、とりあえず怪我の手当てをしよう。何があったかはその後教えてくれればいい」
「……関係ないって言ってんだろ」
「お前はそうでも、俺たちには関係大有りだ。こんな派手な傷作って、誤魔化しようもないだろう?いいからまずは救急箱を…
「うっせぇ!俺に構うなクソ松!!」
「ッ!?」
突然声を荒げ、再び伸ばしかけていた手を勢いよく払いのけると、そのまま走って家を出ていってしまった。
「一松!?どこに行くんだ!」
急いで追いかけようと外に出るも、すでに姿は消えていて見当たらない。あの怪我だからそう遠くには行かないとは思うが…
「…っくそ、本当に何があったんだ…!」
あの大人しかった一松が、あんなにも激昂するなんて。
気が立っていただけなのかもしれない。でも…まだ、心がざわついている。
このままでは、いずれ俺たち兄弟は、崩壊するんじゃないか…?
不安に胸が押し潰されそうになる。もしそうなったら、俺は…俺たちは…