第15章 涙
【おそ松side】
時計を見ると、もう17時を回っていた。
薄暗くなった部屋。電気をつけることもなく、俺は寝たままだった体を起こす。
ここは兄弟の共用部屋ではない。ほとんど物置として扱われている、小さな部屋だ。辺りにはいらなくなった物が山のように積み重なっており、布団もなければ娯楽に使えるものすらない、人がい続けるにはいささか困難な場所。
けれど今の俺にとっては、この上なく居心地のいい場所だった。
内側から施錠した、閉鎖された空間。窓すらない鬱屈とした雰囲気。なんにもないよりは物が溢れかえっていたほうが寂しさも和らぐ。
昨日帰ってきてからすぐここに閉じこもって、はや丸1日が経過しようとしている。兄弟とは顔を合わせていない。ドア越しに声をかけられても無視をした。
唯一母さんだけは、俺を心配してドアの前に食事やらマンガやらを持ってきてくれる。本当は何も食べたくないけど、あんまり心配をかけすぎるのも悪い気がして朝と夜だけは食べた。マンガには手をつけていない。
一番、落ち込むとか塞ぎ込むなんてことに無縁だった俺だからこそ、この待遇なんだろうな。なんて、罪悪感の傍らそう皮肉ってみたりして。
クズだなぁ、俺。ほんとクズでバカ。大バカ野郎だって思うよ。
でもさ、仕方ないんだよ。周りの奴らが俺を美化しすぎなんだ。そんで俺も、なんでか必死に頑張り続けてただけなんだよ。
二重人格ってわけじゃないけどさ。俺の本性なんてクズの極みでしかないんだよ。一松も、あいつも…騙されてただけなんだ。
あーあ…俺なんで長男なんかに生まれちまったんだろうな。どうせなら末っ子がよかった。甘え上手なトド松が羨ましい。
十四松みたいな天真爛漫さに憧れる。
チョロ松みたいな冷静さや判断力も大切だなって思うし、
カラ松みたいな包容力のある兄貴っぷりは見習いたい。
何より、
一松みたいな…真に誰かを想う優しさを持つ、そんな人間に、
俺もなりたかった…