第15章 涙
次の日。学校に行くと、案の定怜衣や遥香といった友達からクラスメイトにまで口々に心配された。
表面上は元気を装っていたつもりだけど、泣き腫らした目元はどうにも隠せなくて、誤魔化すのが大変だった。
先生にも、「何かあったのか」と声をかけられるほど。笑顔を意識していたはずなのに、それがむしろ痛々しく見えてしまってるんだろう。
私は、哀れまれてはいけない。
だから、心配なんてしないで。
全て私が招いたこと。
私が、悪いの。
***
放課後。
帰り支度をする私の元に、彼がやってきた。
「…鈴」
「!…イッチー…」
「話、あるんだけど…帰る前に時間、いい?」
「………うん」
保健室に行こうか迷っていた私にとって、彼の来訪は予想外だった。
人目につくのを嫌う彼は、滅多に教室まで来てくれることがなかったから。
誰もいない廊下を通り、空き教室にたどり着く。「人が来ない場所を知ってる」と彼は言った。それがここなんだろう。
扉を開けて、中に入る。少し埃っぽかった。
「…ごめん、急に。でもあんた、先に帰りそうだったから」
「ううん…」
「それで、話なんだけど。…おそ松兄さん、昨日家に帰ってきてからずっと、二階の部屋に引きこもってるんだよね」
「…!」
彼の言葉を理解した瞬間、頭を鈍器で殴られたかのような衝撃が襲う。
夜、おそ松くんに連絡を取ろうとした。メッセージを送っても既読にすらならなくて、それでもめげずに電話もして、でも声は聞けなかった。
だから、昨日別れてからの彼の様子は知らない。学校を休むどころか、引きこもってしまったなんて…
全部、全部、私のせいだ。
「…おそ松くん、どんな様子だった…?」
「あまり顔を合わせてないから…ただ、部屋の前に置いてあった食事はなくなってたし、必要最低限の生活行為はしてるみたいだけど…元気は、ないと思う」
「………そっか」