• テキストサイズ

【おそ松さん】哀色ハルジオン

第15章 涙





「おそ松くん!」


いつものように校門に寄り掛かっていた彼が、私の声で振り向いた。


「…よう。なんか遅かったな」


「ご、ごめん。友達と話してて」


気のせい、かな?おそ松くん、元気がないように見える。


さっき返ってきたメッセージは、そんなことなかったんだけど…


「じゃ、帰るか。鈴、手繋ごうぜ」


「う、うん」


差し出された手を、ぎゅっと握り返す。…おそ松くんの手、やっぱりあったかいな。


もしかしたら、これが最後になるかもしれない。…最後には…できればしたくないけれど、覚悟だけはしておかなくちゃ。


せめて今だけは。


今だけは、彼の恋人で在りたい。罪人じゃなく、ただの恋人として、彼の隣にいたいよ。


「…ねぇ、おそ松くん。帰る前に、二人で寄りたいところがあるの」


「…!」


本当は、彼と出会った場所がよかったけれど、あいにくと普通の道に面した家屋の軒下だったから…


「どこ?」


「うん…私の、お気に入りの場所…かな」


「…分かった。いいよ」


やっぱり、彼の声には覇気がない。私の暗く沈んだ気持ちが伝わってしまっているのだろうか。


それとも、気付かれているのかな。おそ松くんは鋭いから。


…でも、この手のぬくもりだけはいつもと変わらない。少なくとも拒絶はされていないんだ。


「行こう、おそ松くん」


「…ああ」


着いてしまったら、もう後には引けない。


全てを伝えてしまったら…彼はどんな表情をするだろう。どんな言葉を紡ぐだろう。


突き放されるかもしれない。それでも…受け入れなきゃ。


/ 236ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp