第15章 涙
「おそ松くん!」
いつものように校門に寄り掛かっていた彼が、私の声で振り向いた。
「…よう。なんか遅かったな」
「ご、ごめん。友達と話してて」
気のせい、かな?おそ松くん、元気がないように見える。
さっき返ってきたメッセージは、そんなことなかったんだけど…
「じゃ、帰るか。鈴、手繋ごうぜ」
「う、うん」
差し出された手を、ぎゅっと握り返す。…おそ松くんの手、やっぱりあったかいな。
もしかしたら、これが最後になるかもしれない。…最後には…できればしたくないけれど、覚悟だけはしておかなくちゃ。
せめて今だけは。
今だけは、彼の恋人で在りたい。罪人じゃなく、ただの恋人として、彼の隣にいたいよ。
「…ねぇ、おそ松くん。帰る前に、二人で寄りたいところがあるの」
「…!」
本当は、彼と出会った場所がよかったけれど、あいにくと普通の道に面した家屋の軒下だったから…
「どこ?」
「うん…私の、お気に入りの場所…かな」
「…分かった。いいよ」
やっぱり、彼の声には覇気がない。私の暗く沈んだ気持ちが伝わってしまっているのだろうか。
それとも、気付かれているのかな。おそ松くんは鋭いから。
…でも、この手のぬくもりだけはいつもと変わらない。少なくとも拒絶はされていないんだ。
「行こう、おそ松くん」
「…ああ」
着いてしまったら、もう後には引けない。
全てを伝えてしまったら…彼はどんな表情をするだろう。どんな言葉を紡ぐだろう。
突き放されるかもしれない。それでも…受け入れなきゃ。