第15章 涙
【カラ松side】
スーパーまでの道のりを歩きながら、俺はおそ松兄さんのことが気が気でならなかった。
今頃はもう、全ての真実を知ってしまっているのだろうか。
…俺は心の弱い人間だ。兄弟に嘘をつくことが耐えられなくて、それと引き換えに鈴との約束を破ってしまったんだ。
もし、俺の身勝手な行動のせいで、兄弟の絆に亀裂が走ったら…
「…カラ松兄さん?」
「!一松…」
振り向くと、メモを持った一松が俺を驚きの眼差しで見つめていた。
「なんでこんなとこに…もしかして僕があまりに遅いから、代わりに来てくれたの?」
「あ、ああ…母さんに不審がられるし、一応な。…鈴は、帰ったのか?」
「うん、さっき駅まで送った」
「…そうか」
見たところ、一松に特に変わった様子はない。…鈴とはうまく話せたのだろうか。
「スーパー、一緒に行こうよ。早く済ませないと母さんに叱られる」
「…一松!」
「…何?」
「あ…」
一松の目付きが変わる。その瞳には明らかな拒絶の色が宿っていた。
「…な、なんでもない。行こう」
「…うん」
これで…本当によかったのだろうか。
俺が介入したせいで、この先の未来にどんな影響が出るのかなど、今は知る由もない。
おそ松兄さん、一松、それに…鈴。
皆が幸せになる道は、どこにもないのだろうか…