第15章 涙
【チョロ松side】
「遅いね…兄さんたち」
「うん…」
日が沈み始めても帰ってくる気配のない二人。おそ松兄さんと一松は今頃どこにいるんだろう。
俺たちがゲーセンから帰ってきてもう二時間は経つ。カラ松兄さんはさっき買い物に出ていったから、今家には俺と十四松とトド松の3人だけだ。
「なんかさ…一年前も同じことがあったよね」
ふいに、トド松がそんなことを口にする。
「同じこと?」
「ほら、夏にさ。おそ松兄さんがどこかに出掛けたままなかなか帰ってこなくて、後から一松兄さんが探しに行って」
「……ああ」
¨あの日¨か。
「確かに似てるけど…ね。考えすぎだよ、トド松」
「えっ…僕ひょっとして顔に出てた?」
「うん」
一年経った今でも、あの日のことは鮮明に思い出せる。
俺たちは直接見たわけじゃないけど、おそ松兄さんが何人かの生徒をボコって、泣きすぎて瞼が腫れぼったくなっている一松と一緒に夜中家に帰ってきたこと。
父さんも母さんも、もちろん俺たちもみんな心配した。
兄さんが相手に固く口止めさせたおかげで、学校側には伝わってない。だからこれは、俺たちだけの秘密。
…まぁ、それでも一松にとっては大事件だったんだよな。
あの日の話を家でするのは、自然とタブー扱いされるようになって、誰も口にしようとはしなくなった。
けど、トド松は今の状況とあの日を比べてしまった。泣きそうな、不安そうな表情で。
俺だって怖いよ。また何かあったんじゃないかって、そりゃ不安にもなるよ。
だから…
早く帰ってきて…安心させてくれ…。
ガラッ「「「!!」」」
玄関の戸が開く音に、俺たちは一斉に反応する。
すぐさま全員で玄関まで向かうと…
「お、何お出迎え?たっだいま〜」
帰ってきたのは、おそ松兄さんだった。
特に変わった様子はない。よかった…
「お、おかえり、おそ松兄さん。どこ行ってたの?」
「うん?散歩だよ散歩。でもちょい疲れたから俺、先に布団敷いて寝るわ。夕飯いらないって母さんに伝えといてよ」
「えっ…ちょ、兄さん?」
あっさりと俺たちの横を通りすぎ、二階に上がっていってしまった。
「…や、やっぱり何か…あったのかな…」
「……」