第14章 優しさの罪
どこに行けばいいかが分かっているかのように、自然と足が動く。
走って向かった先…近所にある赤塚公園。
そこに1人佇む、制服姿の誰か。
「…!!」
間違いなく…おそ松兄さんだった。
兄さんは怒りとも悲しみとも取れぬ無表情で、じっと自分の足下を見つめている。
…数にして、ざっと7、8人。同じ制服姿の男子生徒が、折り重なるように倒れていた。
「…ぁ……」
その光景のあまりの衝撃に力が抜け、僕は公園の入り口で地面にへたり込む。
その拍子に、ザリッと乾いた砂の音が辺りに響き渡り、おそ松兄さんはゆっくりとこちらを振り返った。
「…一松?」
へたり込んで声も出なくなっている僕の姿を認めると、おそ松兄さんは慌てた様子でこちらに駆け寄ってきた。
「お前、いつからここにいたの?ほら、んなとこ座ると汚ねぇから立てって」
…そう言って僕に手を差し伸べたのは、いつもの優しいおそ松兄さんだった。
少しだけ安堵して、僕は兄さんの手を取り、立ち上がる。
「…あれ、何…?」
震える手で倒れたままの生徒たちを指差すと、兄さんは後ろ手にボリボリと頭を掻いた。
「あ〜〜〜……言わなきゃダメ?」
「………」
僕が黙っていると、無言の圧力と受け取ったのか、兄さんは諦めたかのように盛大にため息をついた。
「分かってると思うけど、気絶してるだけだからな?あと、見た目ほど深刻なダメージは与えてねぇよ。主に間接技キメただけだから」
確かに、血痕はどこにも見当たらない。殴ったり蹴ったりは極力避けたのだろう。
「ほら、お前のこともあるし…これでも手加減してボコるの大変だったんだからなー。さすがの俺様も、1対8は本気出さずにやんのはちとしんどかったわ」
「…兄さん…」
この人は、またそうやって。
「我慢してたんだけど、我慢できなくなった。俺自身がとやかく言われんのはぜーんぜん構わねぇんだけどさ?ほら、俺ってお前らのお兄ちゃんなわけだし。弟の悪口言うような歪んだ野郎はぶっ飛ばしたくもなるわけよ」