第14章 優しさの罪
…それは、何もしていなくても汗の滴るような真夏日のこと。
進路を決めあぐねていた僕は、勉強に対する興味も徐々に失い始めていた。
今の成績をキープすれば、都内のどの高校にも入れると担任から聞かされてからずっとこの調子だった。
…結局、頭がよけりゃなんだって。
教師なんて、どいつもこいつも変わらない。上っ面だけは一丁前に偉ぶって、生徒を内面からも評価できる奴なんてほんの一握りだ。
馬鹿馬鹿しくて反吐が出る。もういっそ進路もお前らが勝手に決めろよ。何もかもどうだっていい。
僕の努力は空回りしてるだけだった。いや、道を間違えてたんだ。
その事実だけが僕の全てであり、結果だ。
…他のことなんて、どうでもいい。
学校から帰って部屋で寝転んでいると、襖が勢いよく開き、おそ松兄さんが入ってきた。
「おー、一松!なんだお前いたの?相変わらず早いねぇ」
「…僕、部活は入ってないからね」
「それ言ったら俺だって、もう部活は引退したよー?」
「どうせゲーセン行ってたんでしょ」
「あ、バレた?」
にしし、と笑う兄さんを見て、僕も苦笑する。
みんなは、自分たちが僕のせいで周りにどれだけ悪く言われようが、全く意に介する素振りをみせていない。
いや、鬱憤くらいは溜まっているはずだ。でも絶対に僕を責めようとはしなかった。
…僕には、できないよ。
なんで、みんな平気なのさ。
なんで…
「なぁ、一松〜」
「…なに?」
「お前、進路どーすんの?そろそろ締め切りじゃなかった?」
「…もう少し、考える」
「…ふぅん?そ」
もう少し…もう少し。
別にどこの高校だっていいんだ。けど、ここだけは嫌だってところはある。
…それは、兄さんたちが行く高校。
多分みんな同じところを選んでる。僕らは6人で1つ、離れるなんて考えられない。
…だから僕はあえて、離れるんだ。
今の僕には多分、これくらいしかできないから。