第14章 優しさの罪
たどり着いた先にいたのは、意外な人物だった。
「…よう、一松」
「山本…?」
そいつはクラスメイトの山本って男子生徒で、一応僕の友人の1人だった。
当然ながら僕に恨みなんてあるはずもない。でも現にそいつはただ1人で、指定されていた体育館裏に立っている。
「…もしかして、君があのメモを?」
「ああ、そうだよ」
「なんで?僕、君に何かした?」
「……」
本気で分からなかったんだ。こんな風に呼び出されるわけが。
そいつとは、まぁ…親友とまではいかないけど、小学生の頃から付き合いのある仲で。僕たち6人とよく遊んだりもしていた。
…だから油断していたのかもしれない。
「…お前、変わったよな」
「え?」
「別に変わること自体は、悪くないと思う。…でも、最近のお前、なんか感じ悪いよ」
「…ご、めん…意味がよく、分からないんだけど」
「………」
…一呼吸置いて放ったそいつの言葉が、
「一松ってさぁ、
兄弟のこと見下してるよな」
…今でも、脳裏にこびりついて離れない。
***
帰り道、あいつの言葉を頭の中で反芻する。
『一松ってさぁ、兄弟のこと見下してるよな』
…あの場では、「そんなことない」と反論した。あいつは何も言い返さなかったけど。
でも、1人になって、冷静に考えることのできる今。
もしかしたら…と嫌な予感が頭を過る。
見下したことなんてない。そんなつもりはない。僕は優秀になりたくて優秀になったんじゃない。
僕はただ、みんなと肩を並べたくて。みんなみたいないいところが、羨むべき何かが欲しくて。
だから頑張った。今でも頑張ってる。それだけなのに。
他人には…僕の気持ちなんか1ミリも伝わってない。
ただの目立ちたがり屋。兄弟をバカにしてる最低な奴。
…じゃあ僕は、どうすればいい?