第14章 優しさの罪
僕は兄弟が好きだ。
兄3人と弟2人。一卵性の6つ子として生まれ、僕らはずっと同じ環境で育ってきた。そりゃ喧嘩もしょっちゅうするけど、嫌う理由なんてあるわけない。
次男であるカラ松兄さんは、とても優しくて面倒見がいい。
三男のチョロ松兄さんは、怒ると怖いけど僕ら兄弟が間違った道を進まないようにいつも見守ってくれてる。
五男の十四松は、とにかくいいヤツ。一緒にいるだけで元気をもらえる。
末っ子のトド松は、憎たらしいとこもあるけど甘えたがりで可愛い。
みんな大切だ。でも僕にとっては、
長男のおそ松兄さんだけは、頭1つ飛び抜けて尊敬している存在だった。
ちゃんと、僕らにとっての¨お兄ちゃん¨ができる人。基本的に自由奔放で僕らのことも放置してるけど、いざとなったら誰よりも頼れる、かっこいい兄貴。
長男として生まれたから、とか、長男として扱われてきたから、なんて理由じゃまとめきれないくらいに、おそ松兄さんは凄い人だ。
四男の僕は、長男みたいになる必要はない。
でも、生きざまっていうか…やっぱり漠然と、¨兄さんのようになりたい¨っていう願望は、幼い頃から胸の内にあって。
なんでおそ松兄さんにだけ?って考えた時に、
兄さんには、他の兄弟が持ってるもの全てが備わっているからだ、という結論に達した。
つまり僕らは、兄さんの持つあらゆる面の強化版って感じ。
オールマイティーなものに憧れるのは、まぁよくある話だ。
…でもそうなると、
おそ松兄さんに憧れるってことは、同時に他の兄弟にも少なからず同じ感情を抱いているわけで、
そしてそれは、
僕が必要以上に、兄弟に対してコンプレックスを抱いている…という解釈に繋がってしまう。
何が言いたいかって、結局根底にあるのは、
¨自分らしさ¨が分からずにそれを欲した
だから母さんの言うことを素直に聞いて、真面目になろうとした。
多分そういうことなんだと思う。