第14章 優しさの罪
【一松side】
…元々、僕は今とは真逆の性格だった。
真面目で規律を重んじる、根っからの優等生タイプ。でも天才ってわけじゃなく、いわゆる努力型。小学生の頃までは他の兄弟と変わらないくらいバカだったよ。
中学に上がる手前、母さんが僕らに言ったんだ。
『誰でもいいから勉強をしっかりして、せめて高校まではきちんと卒業しなさい』
って。
誰でもいいからって、今考えると酷い言い種だけど。まぁ母さんも、僕たちみんながあまりにバカだったから、見るに見兼ねてああ言ったんだと思う。
それで、言われた通りしっかり勉強に取り組んだのは僕だけだった。
別に、母さんや父さんや誰かに褒められたかったわけじゃない。
そうしろ、と言われたからそうしただけ。
僕が勉強を頑張ってる横で、兄弟がふざけて遊んでるのを見ても苛立ちはしなかったし、
特別ストレスが溜まることもなかった。
そう、僕はただ、自分の意思で。
いつの間にか1人、¨まともな人間¨になっていったんだ。