第13章 本音
ズキズキと痛む心臓が悲鳴を上げる。
これ以上彼女を泣かせるな、と本能が訴える。
…自然と、体が動いた。
「……!」
傍に行き、彼女をそっと抱き締める。彼女は小さく息を呑んで体を強張らせた。
「い、イッチー…?」
まだ嗚咽が止まらず、苦しげな彼女の背中を上下に擦る。
「…ごめん。帰らないから、泣き止みなよ」
なるべく優しい口調で声をかけると、彼女はゆっくりと頷き、安心したように俺に体重を預けてきた。
…鈴に甘いのはおそ松兄さんだけじゃない。俺も同じだ。
しばらくして落ち着きを取り戻したのか、彼女が俺の体から離れ、立ち上がる。
「ありがとう、イッチー。もう大丈夫。…それから逆ギレしちゃってごめんね」
「…別に、それは構わないけど…」
俺も体を起こすと、二人で再びベンチに座った。
「…鈴」
「!は、はい」
「さっきの、質問の答えだけど。…僕、好きじゃない奴にキスなんてしないから」
「…と、言いますと?」
「おま…分かれよ、そこは」
「だってイッチー、回りくどい言い方ばかりなんだもん。私みたいにちゃんとストレートに言ってほしいな」
じぃっと見つめてくるまんまるな瞳。涙と共に暗い感情も流れ吹っ切れてしまったのか、表情はいつもの明るい彼女そのものだ。
って、その方が余計に調子狂うっつーの。ちっ…
俺は頭をガリガリと乱暴に掻き、彼女から目を逸らして呟くような声で告げる。
「……だから、その…僕は、鈴が……………き……」
「?聞こえないよ、イッチー」
「〜〜っ…ねぇ、なんの拷問なのコレ。羞恥プレイ?」
「イッチー」
「うぐ…」
今度こそ言い逃れはできないらしい。僕は覚悟を決め、彼女に向き直った。
「だ、だから…!……僕も好きだよ、鈴のこと」
「うん」
「けど、お前も分かってるだろ。僕たちは結ばれるわけにいかないって」
「…うん」
「だから、付き合いたいとかそういう願望ないから。…勝手な判断でキスしたことは謝る。…ごめん」
「……」