第13章 本音
【一松side】
…こいつが、俺を好き?
頭がうまく働かない。まさか、そんな、冗談だろ。
完全に嫌われたと思っていた。でもお人好しな彼女のことだから、今回俺を呼び出したのはせいぜい「学校に戻ってきてほしい」だの綺麗事を並び立てるだけだと思っていたんだ。
それに鈴は、おそ松兄さんの彼女で…あんなに一途に想い続けてたじゃないか。
俺なんて眼中にもないって分かりきってたから、だからこそあんな…キスなんて最低なことをしたっていうのに。
全てを諦めてたからこそ、俺は…
「…お前、マジで言ってんの」
「うん、大マジだよ」
「バカでしょ」
「分かってる…」
「お前にはおそ松兄さんが
「分かってる!」
再び声を荒げる彼女に気圧され、俺は言葉の続きを紡ぐことができない。
こいつ…本気なんだ。
「…一松くんの言いたいこと、ちゃんと全部分かってるよ。私がどれだけ最低な女かも自覚してるし、おそ松くんに対する罪悪感もすごく…ある。でもね」
彼女の瞳が、俺をまっすぐに見据えた。
「もう隠し事はしたくない。おそ松くんにも、一松くんにも。だから伝えるって決めてた。…この想いを秘密にしたまま、平気な顔しておそ松くんと付き合うなんて器用な真似は私にはできないし、そんなことをしたら二人を傷付けてしまうだけだから」
「…僕は、別に傷付かないよ」
「じゃあどうして私にキスしたの?単なるいたずらだったの?」
「…ああ、そうだよ」
「嘘。…本当の気持ちを教えて、一松くん」
っこいつ…なんで今日はこんなに目敏いんだ。
それともこれが本来の彼女なのか?普段は天然で鈍感でボケボケのくせに、あれは演技だったとでも言うのかよ。
「……理由は?」
「え?」
「僕を好きになった理由は何?いつからなの?」
「…それは…よく分からないの。気付いたら好きになってたっていうか…」
「ハッ…何それ。そんな適当な言い訳で騙されるわけないでしょ」
わざと嫌味たらしく吐き捨てたのに、彼女は怒るどころか悲しげに眉を下げた。
「うん…そうだよね。ごめんなさい」