第13章 本音
多分あいつは気付いてない。後ろ向いてたし。俺もうっすらとしか目を開けていなかったから。
…まぁ、ショックだったよ。
信じてた弟に裏切られた兄貴の気分。ってそのまんまか。
「夜は覚悟しろ」なんて軽い冗談のつもりで、本当はあのまま寝ようと思ってたんだ。でも感情が昂ってどうにも寝られそうになかったから、半分ヤケになって鈴を襲った。いやまぁ、キスしかしてないけど。
でも、一松を問い質そうとまでは思わなかったし、いつかあいつの本当の気持ちを知れればそれでいいかな、なんて安易に考えていたんだ。
俺も甘いよな。あれは一時の過ちだったんだって自分に言い聞かせて、懸命に信じまいとした。
けど、
やっぱ無駄だったのかな。
「…あ」
公園に着くと、ベンチに並んで座る男女が見えた。彼女と一松。
声が聞こえるくらいの距離までそっと近付き、遊具の影に身を隠す。
「あ、あの!ごめんなさい!!」
ってうわ、なんかいきなり謝ってるよ。
「!……は?」
「ぶ、文化祭の…」
「ああ…あれ。謝るべきは僕の方だと思うんだけど」
文化祭…か。やっぱあいつらなんかあったんだな。
「ううん、そんなことない。元はと言えば私が逃げたのが悪いんだし…」
「それを言うなら、あんたが逃げるような原因作ったの僕だよね」
「!ち、ちが
「違わないだろ。僕がキスなんかしたせいで、あんたは僕を避けるようになった」
!
あー…あいつ鈴に2回もキスしたのかよ。マジか。
さすがのお兄ちゃんもショックを隠し切れないなぁ。っていうかこれ果たして最後まで聞いていいのかね?俺耐えられる気しねぇんだけど。
「僕があんなことしなければ
「違う!!」
「っ…?!」
彼女が珍しく大声を上げる。俺も思わず驚きで肩を跳ねさせた。
「違うの…私が悪いの…!」
「……お前」
「イッチー…ううん、一松くん。聞いて」
心臓の音が次第に大きくなっていく。
聞いてはいけない。きっとこの先は、知らない方が幸せだ。
でも、体は動かなくて。
「…私は…
私は、一松くんのことが好き」