第13章 本音
「兄さんに謝ったんじゃない。…¨彼女¨に対してだ」
「¨彼女¨?」
嫌な予感がした。
その彼女っていうのは、きっとあいつのことで。
「…口止めされていたんだ。いや、俺から黙っていると約束した。…でも、俺は…これが正しいとは、どうしても思えないんだ…」
苦しげに顔を歪ませるカラ松を見て、俺は、
俺の心は、
「…いいよ、カラ松。言わなくて。その代わり、鈴がどこにいるのか教えてよ」
今にも張り裂けそうなくらい、痛くてどうにかなってしまいそうだった。
***
『まだそれほど時間は経っていないから、赤塚公園にいると思う。…ただ、見つけてもせめて、近くで様子を窺うだけに留めてやってくれないか』
…んなこと言われなくたって分かってるよ。
さすがに俺、空気は読めるし。いきなり割り込むような真似はしないって。
公園近くの道を歩きながら、ふとこれまでのことを思い返す。
…前兆はあったんだ。
学校じゃ、俺はあいつの側にはいてやれない。だから一松に頼んだ。俺の分まで面倒見てくれって。
俺はあいつを信用してるから。あいつも俺を慕ってくれてるから。
…鈴と関わるようになってから、一松は少しずつ生きることに前向きになっていった。
中学を卒業してからは死んだ目をしてたのに、その瞳に光が宿ったんだ。
兄としてそれは純粋に嬉しかったし、仲良さそうに会話してる二人を見るのも微笑ましかった。
鈴も、一松の話ばかりするようになって。
嬉しかったんだ、本当に。
…でも、あの日。
夏休みにみんなでバーベキューに行って、あいつがうちに泊まった日。
俺、見ちゃったんだよな。
…一松が鈴にキスしてるのを。