第13章 本音
な、なんとか無事、一松を動かすことに成功した…!
その喜びと同時に、罪悪感が沸き起こってくる。
致し方なかったとはいえ、弟を金で釣るような真似をしてしまった…今さらだが、もっと他に方法はなかったんだろうか…
「…ねぇ、そこどいてよ。下りれないでしょ」
「っあ、ああ、すまない…」
言われるままに押し入れから下り、室内に戻る。続いて一松も屋根裏部屋から出てきた。
「…眩し…」
「それはそうだろう。一体何時間いたんだ?」
「さぁ…4時間くらいじゃない」
あんな窮屈な場所によくそんなにいられるものだ…俺はできそうにない。
服についた埃を払い落とし、一松は俺から買い物リストを奪い取った。
「スーパーに行けばいいの?」
「ああ。場所は分かるな」
無言で頷き、一松は部屋を出ていこうとして…
襖の手前でぴたりと止まった。
「…一松?」
「あのさ」
「?」
「僕、別に小遣いにつられたわけじゃないから」
…!え…
「カラ松兄さん、今後悔してるんじゃない?ゲスい真似したなってさ」
「…!い、いや、なんのこと
「それ無意味だよ。…要は僕を外に連れ出せればなんでもよかったんでしょ?」
淡々とした口調。そこからは怒りも悲しみも何も感じない。
「僕が頼みを聞いてあげようと思ったのは…カラ松兄さんがあまりに必死だったからだよ」
「…!!」
…もしかして。
いや、もしかしなくともこれは、
バレてる…?
「それと、まぁ…だいぶ引きこもり生活続けてるうちに、気持ちの整理もついてきたっていうか。ちょうどいいタイミングだっただけ」
「…あ、あの、一松
「買い物はするよ。でも帰りは遅くなるかな。…僕、先に赤塚公園に寄るって¨伝えておいてよ¨。…それじゃ」
部屋を出て、階段を下りていく一松の背中を呆然としながら見送る。
…いつからだ?まさか全て気付かれていたとは。
だが…あれは嘘じゃない。一松は本気だった。
それなら、俺は一松に言われた通り、彼女に伝えるだけだ。
…しかし…
こんな展開になるなんて、さすがに予想できなかったな…
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