第13章 本音
それでも俺は怯まない。
「いつまでもこんな薄暗いところにいたら体によくないだろう」
「死ぬわけじゃないし。他の兄弟に頼みなよ」
「あいにくみんなも用事があるみたいなんだ(嘘)」
「そう。残念だったね」
「お前、学校に行かなくなってから全然外に出てないだろう?運動不足改善に歩いてみるのもいいんじゃないか」
「余計なお世話」
ぐぐぐ…我が弟ながらなんて頑固なんだ!少しもブレる気配がない!
…こうなったら最終手段だ。この手がだめなら連れ出すのは絶望的…賭けるしかない!
「…一松、本当に行きたくないのか?」
「だからそう言ってんだろ」
「小遣いがもらえるぞ?その額なんと5千円だ」
「!!?ごっ…」
よし、反応ありだ!
俺たち兄弟は全員金には弱い。母さんもその辺りが分かっているから、俺たちに頼み事をする時は毎回ではないが小遣いをくれる時がある。
恐らく他の兄弟が断ったのは額が少なかったからか小遣い自体提示されなかったからだろう。母さんは前回も買い物に行った俺を特別視してくれている可能性があるからな。
一松はあまり欲がなさそうに見えるが、根っこは俺たちと同種。ただ今の一松には半端な額では通用しないだろうと思い、ものは試しと色を付けて5千円と言ってみたのだが…
「………」
一松は小さく唸りながら、どうするか思案している表情を浮かべている。それもそうだ、一回の買い物に5千円。普段は高くても2千円だからかなり魅力的なはず。
当然母さんにせびるわけにはいかないから、足りない分は俺が出すしかない…我慢だ、我慢。
少々汚い手だが、形振り構っていられない。あとは一松がどう判断するかだ。
「一松、どうする?」
答えがなかなか決まらないのか、一松は俯いたまま何も言わない。これでもやっぱりだめなのだろうか…
と思ったその時。
「………分かった、引き受ける」
「!本当か!」
「うん」