第13章 本音
【カラ松side】
…さて、どうしたものか。
ここ最近、一松は俺たち兄弟と距離を置いている。
最後に話したのは1週間前だ。こんな状態でよく鈴の頼みを引き受けられたものだと、自分で自分に呆れる。
だが協力すると言った以上はなんとかするしかない。出不精のあいつを外に出すには…
「カラ松〜、いるー?」
「!」
襖が開かれ、母さんが顔を出す。…ん?この流れはもしかして。
「な、なんだ?母さん」
「宿題中ごめんねぇ。悪いけどまた買い物に行ってくれないかしら?下にいる子たちは相変わらずめんどぐさがって聞いてくれないのよ。行ってくれたらお小遣いあげるわ。いい?」
「!!」
これだ!
「ありがとう、母さん!」
「は?」
俺は母さんから預かった買い物リストを片手に、屋根裏部屋へと向かう。
母さんは¨下にいる子たち¨と言った。つまりその中に一松は含まれていないことになる。
なぜならあいつは…
ガタッ
「おーい、一松。そこにいるんだろう?」
「…!!」
押し入れの天井にある屋根裏部屋の扉を開け、中を覗き込む。真っ暗な空間にぽつんと灯る光。スマホをいじっていた一松がこちらに気付いて目を見開いた。
「気付いていないとでも思っていたか?お前、たまに行方をくらませる時は大抵ここに篭ってるだろう。他のみんなは出掛けてると勘違いしてるみたいだがな」
一松は黙ったまま俺を睨み付ける。バレているのと1人の時間を邪魔されたことが不快なのだろう。
だがここで引き下がる俺ではない。
「安心しろ、みんなには秘密にしておく。ただその代わり、俺の頼みを聞いてくれないか?」
返事はない。しかし、スマホの画面で照らされた一松の眼光がさらに鋭くなるのが分かった。もちろん、拒絶の表れだろう。
ここまでは想定済みだ。大体、ここで素直に頷くのなら苦労はしていない。
せめて追い出されるまで粘ってみよう。
「実はついさっき、母さんから買い物を頼まれてな。思わず引き受けてしまったが、俺はまだ宿題が残ってるんだ。そこで、お前に代わりを務めてほしいんだが
「断る」
全部言い終わる前に、いかにも不機嫌そうな声で一蹴された。