第13章 本音
【一松side】
電気もつけず暗いままの部屋の隅で、一人うずくまる。
何もやる気が起きない。誰とも話したくない。今はそんな気分。
一人は楽だ。幸いなことに他の兄弟たちは俺に必要以上に構ってこない。
あの頃と一緒。まるで腫れ物扱いだ。
でも今はそれでいい。だって簡単に一人になれる。
俺が寄るなと言わずとも寄ってこないし、出ていけと言えば部屋を出ていってくれる。楽なことこの上ない。
最後に兄弟と話したのはいつだっけ…カラ松兄さん?
なんか俺の態度に驚いてたよな。別に心からの善意ってわけじゃなかったんだけど。ただ、もう話したくなかったから最後に優しくしてやろうと思っただけ。
あともう一人…ああ、おそ松兄さんか。
『僕が鈴を好きになったとしても?』
我ながら際どい質問だと思った。あと一歩踏み込めば確実に気付かれるくらい。
いや…多分おそ松兄さんの中ではもう確信はできてるのかもしれないけど。
兄さんの返答は…
『それでも。兄弟同士の話し合いはするかもしれないけど、怒ったりはしねぇよ。一松は鈴の友達でもあるんだから、下手に殴ったりでもしたら俺があいつに怒られるかもしれないしな!』
なんて、笑いながら言うんだ。
さすがに呆れたよ。お人好しすぎるっていうか単純にバカすぎるっていうか。そこは怒らなきゃだめだろ。なんで冗談が言えるほど余裕こいてんだよ。
あの人は弟に甘すぎる。彼女に対しても。
このままじゃ、いずれ破滅するのはおそ松兄さんの方だ。
ややこしかったり面倒な話題は極力避けて、常にポジティブに行動する。思ったことははっきり言うタイプに見せかけて、心の奥底に秘めてる本音は決して誰にも打ち明けようとしない。
相手が兄弟や恋人ならなおさら。相手の幸せを一番に考えて、自分は遠慮する。
もし、俺が本気で彼女を欲しがったら、兄さんは迷わず俺に差し出すだろう。「俺の分まで幸せにしてやれよ」とか平気で抜かすんだろうな。
…それくらい、兄弟を大切に想ってるから。
違う、
かつての俺が、兄さんをそんな人間にしてしまったんだ。
つまり悪いのは全部俺で、
そんな俺はやっぱり、
この世に¨要らない子¨なんだ。
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