第12章 羨望
青色のパーカーを着た男の子。私服姿は久しぶりに見たけど、間違いなく彼はカーくんだった。
「鈴?まさかこんなところで会うなんてな」
「そ、それはこっちの台詞だよ。カーくん、1人?」
「ああ、母さんに買い物を頼まれていてな。他の兄弟は行く気がなさそうだったから、無理には誘わなかった」
「そうだったんだ」
「君も1人なのか?用事さえなければ付き合ってくれると嬉しい。俺はあまりこっちの地区には詳しくないんだ」
…どうしよう。確かに1人でいるのは寂しかったし、カーくんなら気兼ねなく話せるかも。
「うん、私でよければ案内するよ。一緒に買い物しよう!」
「ありがとう。じゃあさっそくなんだが…この辺で一番安い服屋はどこだ?いっそ古着でもいい」
「うーん、それならあの店かな。こっちだよ」
カーくんの要望に沿って、服屋や雑貨屋、電化製品店などを回る。
その買いっぷりがまたすごくて…とにかく安いものを選んでまとめ買い。さすが6つ子を持つ家庭は大変だなぁ。
そういえば、カーくんと二人きりって珍しいな。というか、会うの自体、夏休みのバーベキュー以来?
学校が違うと、なかなか機会がないから、なんだか新鮮かも。
レジの精算待ちをしていた私の元に、大きな袋を抱えたカーくんが駆け寄ってくる。
「待たせてすまない。これで全部買ったぞ」
うひゃあ…改めてすごい量。これを1人でって、みんなも一緒に来てあげればよかったのに。
「カーくん、やっぱり私も半分持つよ。重いでしょ?」
「いや、これくらい普段から持ち慣れてるから平気だ。荷物係は大体俺だしな」
そ、それって持たされてるの間違いじゃ…カーくんは本当に兄弟には甘いなぁ。
「だめ、半分貸して。せっかく二人いるんだから」
「あっ」
彼の左腕に掛けられていた袋を全て奪う。…う、これだけでもけっこう重い…!
「お、おい鈴、無理しなくていいんだぞ?」
「だ、大丈夫!私、チビだけど意外に力あるから!」
担ぐように持ち直すと、幾分か楽になった。ほっと息をつく私を見て、カーくんは苦笑する。