第11章 軋み始める関係
「………え……?」
彼の言葉が何を意味するのか。それが瞬時には理解できずに、思わず顔を上げて聞き返す。
でも彼は依然無表情のまま。
「もう会わない。…しばらく、学校休むことにする」
「…な、にを…」
「やっぱりさ、僕なんかには無理なんだよ。周りの人間と対等に生きていくなんて。中学の時、世の中のクソさを痛感したはずなのに、飽きもせずに期待した僕がどうしようもないゴミだっただけ。…だってさ、そうだろ?関わらなければ、欲しがらなければ、苦しい思いをせずに済んだんだ。欲を出したところでいいことなんてこれっぽっちもありはしない。僕はそれをよく知ってる。知ってるくせに、もしかしたら…って期待した。希望を見出だした。バカだよね。ほんっと、学習能力のない、ただのゴミ」
「……いちま、つ…くん……」
「だから、僕はあんたの前から消える。僕はあんたの側にいちゃいけないんだ。…一人で抱え込むのが辛いなら、おそ松兄さんに全部話していいから。あんたは何も悪くないし、おそ松兄さんに殴られる覚悟はできてる。……それだけ」
彼が、私に背を向ける。伝えたいことは全て伝えた、もう話すことはない、と暗に示されているようで…
何かを言わなければ、と唇を動かしても、声が掠れてうまく喋れない。
彼は僅かに首を動かして振り返り、私の様子を確認してから、無言で階段を下りていく。
…彼が行ってしまう。そんなのだめだ。追いかけないと。
追いかけないと……
彼の姿が見えなくなり、ぺたっとその場に座り込む。
体が…動かなかった。
多分、諦めてしまったんだろう。
ここで追いかけても、今の私にはこの気持ちを伝える術がないのだから。
……本当に、もう会えないの?
絶望に打ちひしがれる。こんなの、私の望んでいた結末じゃない。
…じゃあ、私は何を望んでいたの?
私は……
私は、もしかしたら……
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