第11章 軋み始める関係
私の態度が気に入らない、とでも言うように、彼は眉を潜める。
「この間の、まだ引き摺ってる?僕さ、忘れろって言ったよね」
「…そ、そう、だけど…簡単には忘れられないよ…」
「………」
言いたいこと、聞きたいこと…たくさんある。
でも、頭がうまく働かない。胸が苦しい。
それに、いくら逃げたからって…彼がこんなに怒る理由が、分からない。
静寂が訪れる。互いに見つめ合ったまま、どれだけの時間が経っただろう。
…やがて彼は、きつく掴んでいた私の腕を離した。
「まぁ…いいや。全部僕が悪いんだしね」
「…あ…」
消え入りそうな声で呟き、私を見つめる彼。その瞳には、仄暗い闇が宿っているように見えた。
ついさっきまでは怒りを堪えていたのに、今では何も感じ取れない無表情。それがとてつもなく悲しかった。
どうしていつもあなたは、心の内をさらけ出してはくれないの?
どうして何も言ってくれないの?
知りたいのに。あなたのことが知りたくて堪らないのに。
一体どこまでが、踏み込むことのできる境界なのか、そもそも許されているのか、
分からないから教えてほしい、と願うのは、
あなたにとっては迷惑でしかないのなら、
どうして私と友達になってくれたの?
どうして私を…
受け入れてくれたの…?
「……う、ぅ…っ」
「…な…」
涙が、溢れる。
言い様のない哀しみが感情を支配して、彼の顔をまともに見れない。
俯き、ひたすら涙を流す私。ここで泣いたってなんの意味もないのに、止められない。
「……ごめん」
「…ひ…っく…うぅ…」
「身勝手すぎた。反省してる。だから……
もう、僕はあんたには関わらない」