第11章 軋み始める関係
「え、なんで?」
「恥ずかしいからです!」
「いやいや、メイドみたいで可愛いよ鈴。けっこう似合ってる!」
「え…っ!?」
か、かわ…お、おそ松くん今、可愛いって…似合ってるって…!
「おー、顔真っ赤。うんうん、そういう反応も俺嫌いじゃないよ。可愛い可愛い」
頭を撫でられて、私はすっかり大人しくなってしまう。こんな人通りの多い場所でいちゃつきたくはないのに、心臓がドキドキして熱が収まらない。
「着替えなくていいからさ、そのままで俺と文化祭回ろうぜ。休憩入ったんだろ?」
「えぇ!で、でも…」
「可愛いし似合ってんだからいーじゃん。ってかメイド隣に連れて歩けるなんて、こんなチャンスめったにないし。な、鈴の食べたいものなんでも奢ってやるからさ!」
うぐ。食べ物を天秤にかけるとは…!
「も、もう…分かったよ。人混みすごいから、ちゃんとエスコートしてね!」
「おう、任せろ!」
この格好で歩き回るのは死ぬほど恥ずかしいけど…おそ松くんの希望なら我慢するかな。
それにしても、これが憧れの文化祭デート…!だいぶ前から約束してたとはいえ、なんだか緊張するなぁ…
だって、付き合ってるっていろんな人にバレちゃうし…嬉しさと不安が交互に込み上げてくる。
ああでも、よく見ればカップルもちらほら…私たちもあんな風にラブラブに見えるのかなぁ。
…ふと、イッチーのことを思い出す。
あれから会っていない。ううん、彼に会わないように私が意図的に避けてしまっている。
本当は文化祭である今日までになんとかしたかったんだけどな…勇気を出すのってなかなか大変…
「なぁ、これだよな?一松が作ったやつ」
「!あ…」
おそ松くんが入り口に掛けられた看板を見上げる。
そう…イッチーが私と…みんなと作り上げた…
「うん…そうだよ」
「へぇー、あいつやるじゃん。道理で毎日疲れ果ててたわけだな〜」
「……え?」
「最近ずっと、放課後残って作業してただろ?ほらあいつ、高校入ってから何かに真剣に取り組んだのなんて初めてだからさ。慣れないことやってるせいですぐ体にガタが来て、家帰ったらいっつもバテてたんだよなぁ」