第11章 軋み始める関係
「…そう、だったんだ…」
おそ松くんの言葉に衝撃を受ける。
そんなに大変な思いをしてたなんて…私の前ではいつも平気そうに振る舞っていたし、辛いとか嫌だなんて口にしなかったのに。
無理して手伝ってくれてたのかな?私が頼んだりしなければ…
「ああ、でも誤解すんなよ?あいつやりたくないことは絶対やらないタイプだから。それに部屋で色のデザイン考えてんの見たことあるし、内心楽しんでたと思うよ」
「…!」
「って、長話してる場合じゃねーし!ほら行こうぜ鈴、休憩時間なくなる!」
おそ松くんに手を引かれ、彼につられて走り出す。
でも、彼の姿も、周りの景色も、見えてるようで見えていない。
それくらい、私にとっては彼から告げられた事実が衝撃的すぎて、
同時に、ひどく後悔した。
***
「じゃあ午後も頑張れよ鈴!」
「お店入っていかないの?」
「んー、そうしたいのは山々なんだけど、他の兄弟と合流しなきゃならねぇしさ。これからまた混むんだろ?邪魔すんのも悪いし、別のとこ回って時間潰すわ。今日何時に終わりそう?」
「うーん、片付けがあるから…あまり遅くなるようなら連絡するから、その時は先に帰っていいよ」
「分かった。じゃあまたな」
人混みに消えていくおそ松くんを見送ってからバックヤードに入る。
せっかく彼と一緒にいたのに、休憩あまり楽しめなかったな…彼が悪いんじゃなくて、私の気持ちの有り様に問題があるんだけど。
後半戦、こんな状態で無事乗り切れるかな…失態だけは犯さないようにしないと。
「鈴、おかえり〜。さっそくだけど、フロア対応よろしく〜」
「あ、うん!了解です!」
だめだめ、切り替えなきゃ。これからの時間がまた忙しいんだから!
ふぅ…閉店まであと一時間か。ここまで来たら後はもう突っ走るだけ!
売り上げ、きっとすごいだろうな。黒字なのは間違いないけど、校内人気度ランキング何位だろー。1位は確か賞品もらえたよね。
「…鈴。何ニヤニヤしてんの?」
「!?」
注文された紅茶を淹れていると、フロアから戻ってきた怜衣に声をかけられた。