第11章 軋み始める関係
そしてついに。
「か、完成ーーーっ!!」
「疲れた…」
午後7時過ぎ。二人がかりで集中して作業したかいもあり、予定より早く看板ができあがった。
他の生徒はみんな先に帰ってしまっていたため、教室には僕と彼女だけ。よって、彼女の喜びの声がよく響く。
「やったよイッチー!ほんっとうにありがとう!感謝感激雨あられだよー!!」
「はいはい…」
改めて完成したばかりの看板を見下ろす。一応要望通りには仕上げたつもりだけど…僕としては及第点ってところだろうか。まぁ達成感はあるかな。
「ねぇ…こんなもんでいい?」
「もちろんっ想像以上の出来栄えだよ!ちゃんとアンティークっぽくなってるし、これならみんなも満足してくれるよ!」
「……そ、そう」
鼻息荒く熱弁する彼女に若干引いたものの、褒められるのは悪い気分ではない。…高校生になってから初めて、誰かの役に立つようなことをした気がする。いや、ひょっとすると人生初かもしれない。
こういうのを繰り返して、人は自分に自信をつけていくのだろうか。
何かをやり遂げるって、こんなにも清々しいものなんだな…。
「イッチー、はい!」
「……え、何?」
彼女が突然両手を上に挙げる。意味が分からず首を傾げると、彼女はニコッと微笑んだ。
「ハイタッチだよー。いぇーいって」
なにそれ、バカっぽい。
…と、少し前までの僕ならばっさり切って捨てていただろう。
でも今は…そんなバカっぽいことをやってみてもいいかな。
彼女に倣い、おずおずと両手を頭の上まで掲げる。そして…
パンッ
「えへへ、完成おめでとーっ!」
「…お、おめでとう…」
ハイタッチはできたけど、気恥ずかしくて彼女とまともに顔を合わせられなかった。
はー…なんのプレイだよこれ。青春プレイ?いや、ないわ…くっそ恥ずかしい…
「片付ける前にちょっと休憩しない?私も疲れちゃった」
「…ああ」
二人で、窓際に寄せてあった席に腰かける。
ずっと膝をついて作業をしていたから、足が痛い。腰も痛い。
多分彼女に誘われなかったら、僕は協力なんて一切しなかっただろう。みんなが放課後に集う中、ただ一人保健室で寝そべってるだけの存在だったかもしれない。