第11章 軋み始める関係
それから毎日、放課後になると彼女のクラスに足を運び、看板作りに励んだ。
やる気がある、というよりは、単に早く終わらせたかったから。かといって、嫌々やっているわけでもない。
最初は周りの視線が気になっていたけど、それもだんだんどうでもよくなってきた。
むしろ、手伝いを申し出てくる形で男女問わず僕に話しかけてくる生徒が日に日に増えていき、やがて拙いながらも会話を交わせる程度の仲にはなっていった。
人付き合いは苦手だ。コミュ障に成り下がった僕には、この空間は酷でしかないはず。
なのに、不思議とそうは感じない。おかしいな、自分のクラスじゃたまに授業に行くだけで陰口を叩かれるくらいなのに。この差はなんなのだろう。
「イッチー!作業が終わったので手伝いに参りました!」
ビシッと敬礼をする鈴。相手すんのめんどくさ…
「あー…今色塗ってるから、素人はどっか行ってくんない?」
「ひどい!でもめげません!お手伝いさせていただきます!」
そう言って後ろ手に持っていた水彩用具一式を床に置く。塗る気満々じゃん。なんで聞いてきたんだ。
「はぁ…ってか何、水彩?僕ポスターカラーで塗ってるんだけど」
「え?!すみません、持ってきます!」
「いいよ、これ一緒に使えば。制服汚さないように気を付けなよ」
「!うんっ」
「あとはみ出し厳禁」
「ど、努力します…」