第11章 軋み始める関係
木の板を隅から隅まで観察してみる。そこまで分厚くはなく、横長の形状をしている。恐らく教室の戸の上に設置するものだろう。よく見ると角が丸く加工してあるが、安全面を考慮しているのだろうか。
周りの生徒たちは何やらステンドグラスのようなものをランプに貼り付けたり、古そうなアンティーク雑貨らしきものを並べて討論していたりする。つまり雰囲気はヨーロッパ風なんだろうな。
ますます専門外な気がしてならないけど、ここまできたら多少不本意でもやるしかない。幸いデザインはほぼ固まってるみたいだし、後はないセンスを絞り出して形にするしかないか…
下書きを眺めてみる。…ん?いや待て。これデザインっていうか、ただの要望じゃないの?
『文字はフランス語で!』
『薔薇とかあったらいいかも!』
『色合いはシックかつゴージャスに!』
『あとは任せた!(笑)』
…………
「…ねぇ、これ書いたの誰?」ゴゴゴゴゴ…
「い、イッチー?闇のようにドス黒いオーラが出てるんですけども…!」
看板作りを始めて二時間が経過した。
デザイン(というより要望)を書いた女子生徒に怒りの鉄槌を…食らわせようと思ったが諦め、その代わり詳しく完成イメージを問い質して、持ってきていたノートにいくつかデザイン案を書いてみて、その中から鈴が最終案を決め、現在はそれの下書きをしている。
…はぁ。まさか中学の頃の美術の成績が、こんな形で役に立つなんてな。
別に絵が好きなわけじゃないし、得意なつもりもなければセンスもない。というか、美術の絵の課題は毎回兄弟同士の合作だった。
デザインはトド松、下書きはチョロ松兄さん、色塗りはカラ松兄さんで、背景やその他仕上げが僕。おそ松兄さんと十四松の美術レベルはお察しなため、描いてもらう専門。たまに役割交代もしていた。
1人で描き上げるのが面倒だから協力しよう、とおそ松兄さんが言い出したのがきっかけだったと思う。もちろん教師にバレないように、いつも家に持ち帰ってみんなで作業してたな。
ズルではあったけど、あれはあれで楽しかった。さすがに合作だといろいろカオスなことになってて、でもそれが逆に教師には才能があるように見えたらしく、美術の成績は毎年良かった。