第11章 軋み始める関係
次の日の放課後。僕は保健室まで迎えに来た彼女と一緒に、彼女のクラスである3組にやってきた。
「みんな!イッチー…じゃなかった、松野くん連れてきたよーっ!」
教室に入った途端、彼女が大声を張り上げる。中にいた十数人が一斉にこちらを向いた。
「紹介するね!今日から看板作りを手伝ってくれる、5組の松野一松くんだよ!」
「!おい、そういうの別にいらな…
「この通りちょーっと恥ずかしがりやさんだけど、みんな仲良くしてあげてね!」
……ちくしょう、穴があったら入りたい。転校生じゃないんだぞ。
ほら見ろ、みんな反応に困ってるじゃん。大体今さら紹介なんかしなくたって、僕の名前くらい聞いたことあるだろ。認めたくはないけど、保健室通いだの学年トップの成績だのである意味有名だからな…
なのにこいつときたら。なんだこれ、新手のいじめか?
「よろしく、松野くん!」
「手伝いにきてくれてありがとう!」
…って、あれ…なんか歓迎されてる…?
口々に感謝の言葉を述べてくる生徒たちを見下ろし、僕は固まってしまった。その横で、鈴が得意気にウインクする。
「ね?大歓迎だって言ったでしょ?」
「!」
もしかして、こいつ。
…いや、そんなわけないか。いくらなんでも都合のいいように解釈しすぎだ。彼女はきっと何も考えていない。
たまたま、周りが優しい人間ばかりだっただけだ。
「じゃあさっそく始めよっか!これがその看板なんだけどー」
鈴が側に立て掛けてあった木の板を床に置く。それには鉛筆でうっすらと下書きらしきものがされていた。
「…え、これに直接書くわけ?」
「そうだよ。カフェだから、ちょっとお洒落なアンティーク調にしてみたいっていうのが、我らの総意なのです!」
「…カフェなんだ」
「あれ、言ってなかったっけ?!」
「うん」
なんだ、ただ言い忘れてただけかよ…。