第11章 軋み始める関係
必死の剣幕の彼女を見て、呆れともつかぬため息が出る。
僕が甘やかしてきたせいで、何か困ったことがあればすぐ頼ってくるようになってしまった。それ自体は不愉快とまではいかずとも、僕にだって向き不向きはある。
「…仮に僕が承諾したとして、いろいろ問題があるだろ」
「大丈夫、ちゃんとイッチーの担任の先生には許可取ってあるから!クラスのみんなも、看板ができるなら大歓迎だって!」
「……」
おいおい…人が保健室で寝てる間に、何勝手に話進めてんだよこいつ…もうこれほぼ強制だろ。
まぁあの担任、僕の扱い激甘だからな。文化祭の準備をするために動くならなんでもいいんだろう。にしても大歓迎って…こいつのクラスの奴らもどうかしてる。
授業にもろくに出ない、友達もいない完全な部外者なのに。そんな奴に助けを求めるなんて、正気の沙汰とは思えない。
この学校には心底お気楽な人間ばかりだ。…でも、
「…い、いかがでしょうか…?あのほんと、なんでもします!一生のお願いですから!」
僕なんかに頭を下げるこいつが、なぜか妙に可愛らしく見えて。
…どうやら僕は、彼女の頼みを無下にはできないらしい。
「……いいよ」
「!ありがとう、イッチー!!」
その一言を待ちわびていたと言わんばかりの飛びきりの笑顔を向けられて、僕は思わず目を逸らす。
ちっ…調子狂う…
「…ただし、美術得意とかそれもう過去の話だから。高校入ってからは選択授業でも受けてないし、あまり凝ったものは作れないからね。それでもいいなら…」
「いいです、ばっちりです、ありがとうございます!!」
何がばっちりなんだ、何が。
仕方ない…どんな出来上がりになろうと文句はなしってことで、適当に頑張ってやるか…。