第11章 軋み始める関係
【一松side】
9月も終わりに近付く頃。来月初頭に行われる文化祭に向けて、生徒たちはクラスごとや部活ごとに出し物の準備をし始める。
僕は相変わらず保健室のベッドに横になりながら、放課後をまったりと過ごしていた。
うちのクラスはなんだっけ…覚えてないな。前授業に出た時に担任が説明してた気がするけど、興味がないからまともに聞いていなかった。
普段ろくに授業も出ないような奴が、文化祭の準備なんてやるわけがない。当日は適当に体調不良だの嘘をついて休もう。あんな大勢の人間が来るイベントなんて極力関わりたくない。
兄さんたち遊びにくるんだろうな…それは別にいいけどね。日曜だからみんな暇してるし。
そういえば、あいつのクラスは何やるんだろう。別になんだろうがどうでもいいけど、こっちから聞かずともどうせあいつから…
ガラッ「失礼しますっ」
……ほら、噂をすれば。
「イッチー!お願いがあるの!」
「断る」
「ぐふっ!即答ですか…」
毎度の如く容赦なくカーテンを開けられ、ニコニコ顔の鈴が現れる。何か企んでいるように見えたので、僕はさっさと拒絶した。
しかし、彼女も諦めずに食い下がってくる。
「そこをなんとか!せめて話だけでも!」
「興味ない」
「き、聞いてくださればなんでもしますので!!」
「………」
またこいつは、簡単にそんな交換条件を…
なんでも…ね。
「…話すだけ話してみれば。もしかしたら気が向くかもしれないよ」
「えっ本当!?あのね、看板作りを手伝ってほしいの!」
「…は?看板?」
聞いてしまってから後悔する。やばい、これ想像以上にめんどくさそうな展開だ。
大体僕たちクラス違うし。頼む相手間違ってるよね。
「ごめん、無理。意味分かんないしやる気ないし眠たいから出てって」
「後半ただの願望だよイッチー?!じゃなくて!美術得意なんだよね?うちのクラスそういう人いないから誰もやりたがらなくて困ってるの!どうかお願いします!!」
……こいつなんでそんなこと知ってんの。おそ松兄さん経由?家帰ったら反省させないと。
「………」
「い、イッチー…?」
「…はぁ」