第9章 夏休み
「そんなに身構えるなよー。…いやまぁ身構えるか。俺さっきあんなこと言っちゃったわけだし」
「あんなこと、って…」
『夜は覚悟しておけよ』
「っ…!」
ああ、どうしよう…熱くて死んじゃう…
「あれさぁ…とりあえず今回は撤回させてくんねぇ?」
「……へ?」
「ただし。バーベキューの時にしそびれた分は補給させてくれな?」
意味が分からず混乱している私に彼はそっと近付き、キスを落とす。
「!?」
なんとなく予感はしていたとはいえ、こうも直球でこられるとどうにも反応が鈍ってしまい、私は目を見開いて固まってしまった。
唇が離れ、彼は私を見下ろしながら優しく微笑む。
「ほんと、可愛いなぁ鈴は。…キスくらいでさ、いちいちそういう可愛い反応されると、俺の理性壊れちゃうから勘弁してくれよ」
「ふぇっ…!?」
…な、なんだか違う。今私の目の前にいる人、いつものおそ松くんじゃないみたい。
こ、こんなに…反則的なほど、かっこよかったっけ…
「…まだ足りないなー。ってわけで、もっかいだけ」
「えっ、ま、まっ…んんっ!」
反論する間も与えず再度口付けられ、私はもう大人しく彼に従おうと瞳を閉じた。
…好き。
喧嘩してたはずなのに…そんなのどうでもよくなってしまう。
恥ずかしいし、いろいろ反則だし、ときめかされてばかりで悔しいし、言いたいこともたくさんあるけど、
今夜だけは…許してあげようかな―。