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ワンナイショータイ

第1章 金髪の彼


「……」

「あのコの彼怖いの?」

見送ってまた席に戻った私に、おにいさんが聞いてきた。

「え……うん、まあ。一緒に住んでるからそれもあると思う」

同棲していたら、お互いの行動に対してそうなってしまうのも仕方ないと思う。

むしろ、こんな時間まで独占しちゃって、逆に彼氏さんに申し訳ないくらいだ。

「まぁいいや。俺はおねえさんと呑みたかったし」

はい乾杯、と私のカクテルグラスに自分のウイスキーが入っているのだろうか、琥珀色の液体が入ったグラスを軽くぶつけてきた。

「おねえさんのことなんて呼ぼうか?ずっとおねえさんって呼ぶの面倒だし……さっき友達が言ってたみたいに茜って呼んでもい?」

目の前で輝くような笑顔。

友達が言ってた通り悪い人じゃなさそうだし、一夜限りとはいえイケメンと呑めるのはラッキーだと前向きに思おう。

「いーよ。じゃあ私はおにいさんのことなんて呼ぼう?」

酔った勢いと、おにいさんの人柄で私も馴れ馴れしいやつになりそうだが、そこも開き直りだ。

「じゃあ……ライトって呼んで!」

「ライトぉ?」

いくら金髪とはいえ目は予想に反して茶色だし、更にペラペラ日本語喋ってるし、偽名としか思えない。

いや、ひょっとしてキラキラネームなのか?

「そ。ライトって呼んでよ」

「りょーかい」

そっちがそのつもりなら私も偽名にすれば良かったかななんて思ったけど、それももう今更だ。

とにかく今は難しく考えるのが面倒臭い。

だから私はおにいさんのことをライトと呼ばせてもらうことにした。

「茜はどれくらい呑んだの?」

「んー、記憶になーい」

ビールから始まってカクテルカクテルカクテル……。

「お酒強いの?」

「強かったらこんなべろべろにならないよー」

だからって弱くもないけど。

カクテルを喉に流し込んだ私に、 

「楽しそうだね」

まだ余裕なのか、のんびりとグラスを傾けるライト。

そのままふたりでもう一杯アルコールをお代わりしてから店を出ることにした。
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