第5章 今日からお前は…(カラ松)
「僕良いところ知ってるー」十四松がハイテンションに手をあげ、向った先は美術室。
たしかに、あまり足を運ばない場所だ。
ガラリと扉をあけ、各々床に座り込み同じ弁当を広げる。
いつも通り騒ぎ、いつも通り弁当のおかずを一松に取られる。
弟に譲るのは仕方ない。今日のおかずは唐揚げで本当はあげたくなかったが…しかたない。
バタバタとお弁当を食べ終わり、各々教室へ戻って行った。
俺はみんなの食べ散らかしたゴミを拾って片付けてから帰る。これもいつもの事だ。
屋上なら十四松が食べこぼした米粒など放置できるがここは教室、片付けなくてはいけない。
ティッシュで床に落ちた米を拾い捨てようとゴミ箱をさがす。
…ない。
美術準備室にならあるかもしれない。
そう思い、準備室につながる扉をあける。
そこで目にしたモノに俺はすべての感覚を奪われるような気分がした。
それは先ほどまでクラスの隣の席にいた⚫︎⚫︎が準備室のソファーで寝ていたのだ。
とても熟睡しているのか起きる気配はない。近くにあったゴミ箱にぽいっとティッシュを捨て、ポケットに入っていた携帯を取り出した。
カシャッ、カシャッ。
普段見せない寝顔にとても興奮した。
可愛い、可愛い、可愛い!
気がつくと写真を撮っていた。
そしてそのまま立ち去ったのだ。
ドキドキと鼓動が早まる。教室に戻っても治らない鼓動を沈めるかのように外を見る。
あと10分したら次の授業が始まる。
⚫︎⚫︎はまだ帰ってこない。
こっそり先ほど撮った画像を見る。
可愛いな…俺だけのものにしたい。
その想いが強まる。
鐘が鳴る直前に⚫︎⚫︎が帰ってきた。
俺は意を決して⚫︎⚫︎に尋ねた。「⚫︎⚫︎は昼休みどこへ行っているんだ?」
「ん〜内緒かなぁー。誰にも邪魔されないところ」
フッと笑って席に着く。寝顔を見られてるなんて気がついていないようだ。
「そうか、気が向いたら俺にも教えてくれ。」と伝えると、彼女は「カラ松来ると女の子か兄弟ついてくるからなぁー。うるさそう。だからやだ。」と机に顔をつけ、こちらに顔だけ向けてニッと笑いながら答えた。